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    AI導入事例:受注・発送業務をAIで立て直した2社の記録

    注文・問い合わせ・発送といった日々の業務が、売上の伸びとともに人手で追いつかなくなる。多くの現場で起きているこの問題に、AIをどう組み込んで解決したか。ここでは実際に相談を受けた2社の事例と、その裏にある考え方を、できるだけ具体的に記録する。

    目次

    1. なぜ今、業務システムにAIを組み込むのか
    2. AI Labについて
    3. 事例①:焼肉店・食肉卸のEC/受注業務 ― 30人体制から15人で当日完結へ
    4. 事例②:子供服EC ― 主婦3人体制から年商5億円へ
    5. 全面刷新型と組み込み型 ― どちらでAIを導入するか
    6. AI導入でよくある失敗パターン
    7. 費用・期間の目安と対応エリア

    1. なぜ今、業務システムにAIを組み込むのか

    業務フローが整理される様子を表す抽象イメージ

    注文数や問い合わせ件数が増えると、まず人手を増やして対応しようとする。しかし人を増やすには採用・教育のコストと時間がかかり、業務量の増加スピードに追いつかないことが多い。結果として、注文処理が翌日以降にずれ込む、問い合わせへの返信が遅れる、といった形で業務が滞留していく。

    ここで有効なのが、既存の業務システムに生成AIを組み込むという方法だ。とくに効果が大きいのが、自社の商品情報・注文履歴・FAQ・過去のやり取りをAIに参照させたうえで回答や処理を生成する仕組みで、これは「RAG(Retrieval-Augmented Generation/検索拡張生成)」と呼ばれる。汎用のチャットAIが持っていない自社固有の情報を検索してから回答を組み立てるため、社内の担当者が答えるのに近い精度を出せる。この技術はLewis et al.の論文”Retrieval-Augmented Generation for Knowledge-Intensive NLP Tasks”(NeurIPS 2020)で提案されたもので、今の業務システムへのAI組み込みの土台になっている。

    重要なのは、AIを入れれば自動的に業務が改善するわけではないという点だ。どの業務のどの部分をAIに任せ、どこは人が判断するかを設計する必要がある。以下の2つの事例は、その設計をした結果である。

    2. AI Labについて

    AI Labは、山梨県を拠点に1980年代から業務システムの受託開発を行ってきたKAIテクノウェブデザイン(岩﨑哲也)が運営するAI導入支援の窓口だ。

    もともとは自社サイト(ses-jv.jp)のAIO対策(AI検索最適化)に自ら取り組んだのがきっかけだった。ChatGPTやPerplexityのようなAI検索から見つけてもらうために、自分自身でAIを使って情報発信や業務の見直しを進める中で、同じ課題を抱える顧客からの相談が増え、専門のサービスとして独立させたのがAI Labである。

    母体となるKAIテクノウェブデザインは、製造・卸・小売・サービス業の業務システムを長年設計してきた会社で、会社として関わった開発・導入は累計5,000件になる。AI Labはこの実績の上に、AIという新しい選択肢を追加したものであり、ゼロから始まったAI専業サービスではない。

    3. 事例①:焼肉店・食肉卸のEC/受注業務 ― 30人体制から15人で当日完結へ

    業種:焼肉店・食肉卸のEC/受注業務

    導入前の状況:注文受付、問い合わせ対応、発送作業を30人体制で回していた。業務量が増えるにつれて処理が追いつかなくなり、当日中に完結すべき作業が翌日以降に持ち越されることが常態化していた。

    行ったこと:AI導入による業務の整理と改善。注文受付から問い合わせ対応、発送指示までの流れを見直し、AIが処理できる部分と人が判断すべき部分を切り分けた。なお同社とは別に、食肉工場向けにLINE受注から請求までを一体化したシステムをPMとして構築した実績もあり、食肉業界の受発注業務特有の事情(在庫の鮮度管理、発送単位の複雑さなど)を踏まえた設計ができた。

    結果:15人体制で日々の業務が当日中に完結するようになった。人員をほぼ半減させながら、業務効率化も同時に達成している。人を減らすことが目的ではなく、増員なしでは対応しきれなかった業務量を、AIを組み込んだ体制で吸収した結果である。

    4. 事例②:子供服EC ― 主婦3人体制から年商5億円へ

    少人数のまま事業規模が拡大する様子を表す抽象イメージ

    業種:子供服EC

    導入前の状況:主婦3人の体制で運営し、月商は数百万円規模。注文対応、問い合わせ対応、新商品登録に追われ、これ以上人を増やさない限り成長が止まっている状態だった。

    行ったこと:受注・発注・発送をすべて管理するAIシステムを構築した。注文が入ってから発送されるまでの一連の流れと、発注のタイミング判断までを一つのシステムでカバーする設計にした。

    結果:人員を増やさないまま年商5億円まで拡大した。3人という体制そのものは変えずに、業務量の上限を引き上げた形になる。

    2つの事例に共通するのは、「人を増やす」のではなく「一人あたりが処理できる業務量を増やす」方向でAIを使った点だ。業種も課題の中身も異なるが、どちらも受注から発送までの流れの中にボトルネックがあり、そこにAIを組み込むことで解消している。

    5. 全面刷新型と組み込み型 ― どちらでAIを導入するか

    既存の仕組みにAIを組み込む様子を表す抽象イメージ

    AI導入には大きく分けて2つのやり方がある。既存システムを丸ごと作り替える「全面刷新型」と、既存システムを残したまま必要な部分にAIを追加する「組み込み型」だ。

    全面刷新型 組み込み型
    既存システム 作り替える そのまま残す
    期間 半年〜1年以上になりやすい 数か月から始められる
    コスト まとまった投資が必要になりやすい 小さく始めて段階的に拡張できる
    業務への影響 移行期間中に運用が止まりやすい 現場の運用を止めずに検証できる
    向いているケース システム自体が老朽化し限界にきている 特定の業務(受注処理・問い合わせ対応など)がボトルネックになっている

    AI Labでは、多くの場合、組み込み型を優先して検討する。既存システムを残したまま、AIを必要な部分に組み込む方法のほうが、リスクを抑えながら効果を確認できるからだ。

    進め方としては、まずヒアリングで現状の業務フローとボトルネックを確認し、小さく試作(PoC)を作って実際のデータで検証する。効果が確認できた部分から本番の業務システムに組み込み、運用しながら調整していく。事例①・②とも、この順番で進めている。

    6. AI導入でよくある失敗パターン

    相談を受ける中で、以下のようなパターンで導入がうまくいかないケースをよく見る。

    • 汎用のチャットAIをそのまま導入し、自社の商品情報や過去のやり取りを参照できないまま使い、的外れな回答しか返せない
    • 業務の一部ではなく全部を一度に作り替えようとして、途中で開発が止まる
    • 導入後に「誰が結果を確認し、誰が修正するか」という運用体制を決めずに始めてしまう
    • AI専業の会社に依頼し、既存の業務システムとの接続部分で行き詰まる
    • 逆に既存システムの開発会社だけで進め、AIの選定や調整のノウハウが足りずに効果が出ない

    最後の2つは表裏の関係にある。AI専業の会社は業務システムの構造を読み解くことが専門外になりがちで、逆に業務システム開発会社だけではAIの選定・調整が難しい。この分断が、AI導入がうまく進まない大きな原因になっている。業務システム開発を本業とする会社がAI導入まで一貫して担うことには、この分断を避けるという意味がある。

    7. 費用・期間の目安と対応エリア

    費用と期間:AIの試作・検証から始める場合は数十万円規模、業務システムと組み合わせて本格的に導入する場合は数百万円規模が目安になる。期間は、試作・検証だけであれば1〜2か月、本番運用まで含めると3〜6か月が一般的だ。実際の金額と期間は業務の内容によって変わるため、ヒアリングをしたうえで無料で見積もりを出している。

    対応エリア:山梨県内の企業からの相談には訪問での対応も可能。県外の場合は、オンラインでのヒアリングと打ち合わせが中心になる。

    まとめ

    焼肉店・食肉卸のEC事例では30人体制が15人で当日完結する体制に、子供服EC事例では主婦3人体制のまま年商5億円まで拡大した。どちらも人を増やす代わりに、受注から発送までの業務フローにAIを組み込むことで、業務量の上限を引き上げている。

    AI導入は「入れれば自動的に良くなる」ものではなく、どの業務のどこにAIを組み込むかという設計が結果を左右する。既存システムを活かせるかどうかをまず検討し、小さく試してから本番に組み込んでいくという順番が、遠回りに見えて確実な進め方になる。

    よくある質問(FAQ)

    今使っている業務システムを作り直す必要がありますか?

    多くの場合、必要ない。既存システムを残したまま、AIを必要な部分に組み込む方法を優先して検討する。事例①・②とも、業務フロー自体を一から作り替えたわけではなく、受注・発送の流れの中にAIを組み込む形で対応している。

    導入にかかる費用と期間はどれくらいですか?

    試作・検証から始める場合は数十万円規模、業務システムと組み合わせる場合は数百万円規模が目安。期間は試作・検証で1〜2か月、本番運用まで含めると3〜6か月が一般的。ヒアリング後に無料で見積もりを出している。

    なぜAI専業の会社ではなく、業務システム開発会社にAI導入を頼む方がよいのですか?

    AI専業の会社は業務システムの構造を読み解くのが専門外になりがちで、業務システム開発会社だけではAIの選定・調整が難しい。この分断がAI導入のつまずきどころになりやすいため、業務システム開発を本業とする会社がAI導入まで一貫して担うことに意味がある。

    山梨県外からでも相談・依頼できますか?

    対応している。県外の場合はオンラインでのヒアリングと打ち合わせが中心になる。山梨県内であれば訪問での対応も可能。

    どれくらいの効果が期待できますか?

    事例①では30人体制が15人で当日完結する体制になり、事例②では主婦3人体制のまま年商5億円まで拡大した。ただし効果の大きさは業種・業務量・既存システムの状態によって変わるため、まずはヒアリングでボトルネックを確認するところから始めている。

    参考文献

    • Lewis, P., Perez, E., Piktus, A., et al. (2020). Retrieval-Augmented Generation for Knowledge-Intensive NLP Tasks. Advances in Neural Information Processing Systems 33 (NeurIPS 2020).